高温多湿地帯が原産の胡蝶蘭は、寒さや乾燥した空気が苦手です。
湿度が下がり、かつ気温が氷点下になることもある日本の冬は、胡蝶蘭にとって非常に厳しい環境です。このため、人の手で越冬の準備をしてあげる必要があります。
あわせて、冬を超えたものの元気がなくなってきた胡蝶蘭に施すべき、応急処置もご紹介していきます。
本格的に寒くなる前に読んで、胡蝶蘭が冬を越せるよう参考にしてください。
1.胡蝶蘭ってどんな植物?
冬を超える準備をするうえで大切なのは、胡蝶蘭がどのような性質の植物かを知ることです。
まずは胡蝶蘭の生体をはじめ、知識面から、胡蝶蘭の越冬に必要な準備を確認していきましょう。
台湾やフィリピン、タイ、インドネシア、マレーシアなど赤道付近の高温多湿地域に自生する野生の胡蝶蘭は、年間を通して温かく湿潤な気候のなかで過ごす着生植物です。
着生(ちゃくせい)植物とは土の中に根を張らず、大きな岩や木に寄生するようなかたちでくっつき、空気中に根を伸ばしていく植物のことです。
空気中からも水分や養分を吸収する習性があり、少ない水分や栄養だけでも生きていけると言われています。
このため胡蝶蘭は、気温15~25度、空気中の湿度は60~80%の環境を好み、温度が低いことと、乾燥に非常に弱いです。
2.胡蝶蘭を越冬させるための対策
先述した胡蝶蘭の性質を踏まえると、胡蝶蘭を越冬させるには、以下の条件を守る必要があるとわかります。
- 温度は低すぎず、最低でも10度以上を保つこと
- 乾燥によって枯れないよう、湿度を50%以上に保つこと
- 乾燥はするものの、水を上げすぎて根腐れを起こさないこと
これらの条件を満たし、胡蝶蘭を日本の冬の寒さから守るために必要な対策を低温対策と乾燥対策の2つに分けて、ご紹介します。
2-1.冬の「低温」から胡蝶蘭を守るための対策
日光が差し気温の上がる昼は、窓際に設置
胡蝶蘭は、風通しが良く木漏れ日のような日光のあたる場所を好みます。
冬は日照時間が短くなりますが、窓から日が差し暖かくなる昼前後の数時間を狙って、窓際に置き陽の光が当たるようにしましょう。
ただし、直射日光に当ててしまうと、葉がしおれて病気の原因となってしまうので、レース越しで光が当たるようにしてください。
気温が下がる日没後は、窓から離した場所に置く
日没後、冬の夜は非常に気温が下がってきます。室内の気温は屋外に比べると高いですが、それでも、窓のそばは外の冷気が漂い温度は非常に低いです
冬は、日光が出ている時間帯以外は窓際から胡蝶蘭を離し、比較的窓際に比べたら温度の下がらない部屋の中央などに置きましょう。
段ボール、ビニール袋などで保温
特に冷え込みが厳しくなり、暖房が切られることも多い夜間は、窓際ではないところでも気温が10度を下回る可能性があります。
就寝中に胡蝶蘭が寒さで枯れてしまわないよう、寝る前には段ボールやビニール袋などですっぽり鉢を覆って保温するのがとてもお手軽にできる対策なのでおすすめです。
2-2.冬の「乾燥」から胡蝶蘭を守るための対策
温かい時間帯を狙って、葉水をしてあげる
胡蝶蘭の葉の裏表に、霧吹きで水をあげることを「葉水(はみず)」と言います。
葉水には、鉢周辺の湿度を上げる加湿の効果があります。冬の気候、また暖房のために部屋の空気が乾燥しているようなら、1日に何度か葉水をしてあげてください。
それでも乾燥しているようなら、加湿器のそばに置くか、水を張った洗面器の近くに胡蝶蘭の鉢を置いて加湿します。
ビニール袋をかぶせるのは、保湿にも有効的
低温から守る方法として紹介したビニール袋を鉢にかぶせるのは、保湿にも非常に有効です。
口は縛らず、鉢をまるごと覆うようにビニール袋をかぶせて置いておくだけで、鉢の周りを適度に保温・保湿してくれます。
水やりは、植え込み材が乾ききってから
冬の胡蝶蘭は休眠状態に入っているため、ほとんど栄養を必要としません。
このため加湿が必要な一方で、根への水やりは必要最低限にとどめる必要があります。
根元の植え込み材を手で触ってみて完全に乾いていることを確認し、コップ半分程度の水を与えるだけで十分ですので、水のあげすぎには気をつけてくださいね。
3.越冬準備中にやってはいけないこと
越冬準備期間(秋から冬にかけて)に絶対にやってはいけないことを紹介します。
1つ目は肥料や過度な量の水を与えることです。この時期の胡蝶蘭は休眠しており、ほとんど栄養を必要としていないにも関わらず肥料や過度な量の水を与えてしまうと枯れたり根腐れを起こす原因となってしまいます。
2つ目は新しい鉢に移し替える「植え替え」です。植え替えはときには必要な作業ですがやることで株が消耗してしまうため、越冬準備期間中にやってはいけません。基本的に植え替えをするのは5〜7月がベストです。
これら2つは株を消耗させてしまうだけなので越冬準備が始まる秋以降は、絶対にしないでください。
4.越冬したけど元気がない…。すぐできる処置はある?
冬を終えた段階で、枯れてはいないものの「葉が全部落ちてしまった…」や「葉がシワシワにしなびてしまった…」という異常が見られるなら、胡蝶蘭が冬の寒さからダメージを受けていると考えられます。
このように、何らかの理由で冬の間にダメージをおってしまった胡蝶蘭にできる応急処置の方法を紹介します。
4-1.葉がほぼ全部落ち、茎だけになってしまった
このような症状の胡蝶蘭は、冬のうちに株が弱ってしまったと考えられます。
3〜6月の間以下の対策で様子を見ましょう。
3月 | 水やりを中止。葉が落ちた傷口と植え込み材を乾燥させる |
4〜5月 | 霧吹きで植え込み材表面のみ湿らせ、湿気から水分補給をさせる。 |
6月 | 新しい芽が生えてきたら、株が回復した証拠。回復しなければ処分を。 |
4-2.葉がしわしわになり、しなびてしまった
冬の間の水やり過多で鉢の中が蒸れてしまい、根から適切に水分を吸収できていない可能性が高いです。
以下の手順で対処し、回復を待ちましょう。
- 霧吹きで鉢の周辺を湿らせてから、ビニール袋を被せ暖かい室内に置く
- そのまま1~2か月観察しながら待ち、葉にツヤが戻れば回復した証拠
もし回復手順の途中でカビが生えたり、根から嫌なにおいがしたら、根腐れを起こしているかもしれません。4~6月になるのを待って、植え替えをしてみましょう。
植え替えの手順はこちらで紹介しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
高温多湿地帯で原生する胡蝶蘭は冷えて乾燥する日本の冬は大敵ともいえます。
冬を乗り越えきれいな花を咲かせるためにも、対策してあげましょう。
カシマ洋蘭園のスタッフです。胡蝶蘭のお世話のやり方や贈る際の注意点など、わからないことがあればぜひ参考にしてみてください